電脳産物
BYD RACCO / 2026年11月5日時点の調査まとめ

BYDの軽EV「ラッコ」は
本当に売れているのか

2026年7月28日発売。海外メーカーとして初めて日本の軽規格に合わせて専用設計された、両側電動スライドドアのスーパーハイト軽EVです。受注・登録の数字と、試乗者・購入者の声を整理しました。

ひとことで言うと

輸入車としては異例の好スタート。ただし掲げた「年内受注1万台」には遠く、ナンバーが付いた台数はまだ受注の半分ほどです。クルマ自体の出来は評論家筋でかなり高評価、一方でネットでは「中国製」への拒否感が根強く、評価が真っ二つに割れています。

主要な数字

2,022台累計受注(10月18日時点)
約1,255台登録・届出 累計(7〜10月)※
85%最上級「300Premium」の受注比率
約8割BYD車を初めて買う新規客

※10月分は全軽自協の速報で「BYD」メーカー合計607台。BYDの軽はラッコのみのため実質ラッコの数字と見られますが、車名別の確報は11月中旬公表予定です。

受注の伸び方

05001,000 1,5002,0002,500 8/19/110/110/18 741 1,002 約1,500 1,832 2,022

発売2週間で1,000台を超え、BYDの日本導入モデルでは過去最速のペースでした。ただ、その後は月300〜400台程度に落ち着いています。BYDは「年内に受注1万台」を目標に掲げていましたが、10月中旬時点で約2割。一定ペースで1万台に向かうなら10月中旬には5,000台超が必要だった計算で、目標達成はかなり厳しいと見るのが自然です(これは単純計算による私の見立てです)。

なお、お盆明けにBYDの大型店を取材した記事では、店舗の成約は7台で「来店は多いが成約率が低い」という声もありました。一方BYD側は「店舗あたり月約20台ペース」と説明しており、店によって温度差がありそうです。

実際にナンバーが付いた台数

0200400600 12581 442607 7月8月9月10月(速報)

8月の登録が81台だったことで、ネットでは「81台しか売れていない」という話が広がりました。実際は受注の8割以上を占める上位グレード(300系)の納車が9月後半まで始まっていなかったためで、受注と登録のタイムラグによるものです。上位グレードはブレードバッテリーの確保に時間がかかっており、9月末時点でバックオーダーが約1,300台ありました。

比較のため、8月の軽EVの登録は日産サクラ853台、三菱eKクロスEV101台、ラッコ81台。10月の約607台はサクラの月販に並ぶ水準で、納車が進んだ今後の月がようやく「実力」を示す数字になりそうです。

誰が買っているか

項目内容
グレード最上級「300Premium」(249.7万円・航続320km)が約8割(9月末時点で85%)。エントリーの「200」(214.5万円・210km)は少数
客層BYD初購入が約8割。30〜50代の主婦層が中心で、女性比率が高めと報じられています
人気色アークティックホワイト44%、チーズイエロー20%、コスモスブラック/ミッドナイトグリーン各12%
充電環境初期受注者の半数以上が自宅に充電設備あり

評価:良いところ・気になるところ

注意点として、上位グレードの納車が始まって1か月半ほどしか経っておらず、長期オーナーのレビューはまだほとんどありません。以下は評論家の試乗記と、試乗者・契約者の口コミが中心です。

評価されている点

  • 静粛性が高い。サクラやN-ONE e:より一段静かという声(個人試乗ブログ)
  • ボディ剛性と低重心による安定感。背が高いのにふらつかない(評論家・試乗者多数)
  • 航続表示が正確。満充電表示320kmがカタログ値どおり(レスポンス 中村孝仁氏)
  • 急速充電が速め。30分ほどでSOC51%→96%(EVsmart)
  • 後席がしっかり座れる。現行軽で最良クラスという評価(個人試乗ブログ)
  • 回生ブレーキが自然で、EVらしいクセが少ない(carview 試乗レビュー)
  • 装備の割に価格が手頃。「誰が乗っても70点以上」(note 試乗記)

指摘されている点

  • ステアリングが軽自動車としては重め(中村孝仁氏)
  • 車重のせいか発進加速がEVの割に物足りない(同上)
  • 上位グレードは車重1.2t超で、荒れた路面で足回りがバタつく(価格.com、個人ブログ)
  • 静かな分ロードノイズが目立つ。純正タイヤが日本で馴染みのない銘柄(価格.com)
  • ナビのフリーズやADASの誤作動など、ソフト面の初期不具合の口コミ未確認・噂レベル
  • デザインが「ダイハツ風・ホンダ風」で個性が薄い(価格.com)
  • 町の整備工場で診てもらえるか、部品供給、リセールへの不安(Yahoo!知恵袋)
ネット上の反応は二極化しています。実車に乗った評論家の評価はおおむね好意的で、「中国車を褒めるな」と炎上した評論家もいたほど。一方、SNSや知恵袋の否定的な意見は「中国製だから」「バッテリー発火が心配」といった、乗った上での評価ではないものも目立ちます。

売れ行きを左右している事情

要因内容
補助金の差国のCEV補助金はラッコが一律15万円、サクラやN-ONE e:は58万円。2026年4月の制度改定で国産電池や整備体制を重視する形になったため。補助金込みの実質価格では、サクラの最安グレードがラッコより安くなります
商品力の差サクラは航続180kmのハイトワゴン、ラッコは最大320kmのスーパーハイト+両側電動スライドドア。装備と航続で補助金差をある程度埋めている格好です
販売網BYDは年内100拠点を目標に拡大中。近くにディーラーがない地域ではアフターサービスへの不安が残ります
ローン残価率50%の5年据置ローンで月々1万9,300円から。車両保証6年・15万km
新たなライバルスズキ初の軽乗用EV「e SKY」が212万円で11月16日発売。日経は「BYDを超える航続距離」と報じており、今後の受注への影響が注目点です

まとめ

「売れているか」への答えは、比べる相手で変わります。BYDの2025年の日本での乗用車登録は年間3,742台。それを考えると、2か月半で2,000台超の受注は同社にとって明らかな成功で、軽EVの中でもサクラに次ぐ存在になりつつあります。一方、目標の年内1万台や、月2万台近く売れるN-BOXと比べれば、まだ「話題の新顔」の段階です。11月中旬にスズキe SKYが出ること、上位グレードの納車ペース、そして実オーナーの長期レビューが出そろう年末〜来春が、本当の評価の分かれ目になりそうです。

出典

  1. 日本経済新聞:ラッコ受注2000台超す(2026/10)
  2. マイナビニュース:受注1,832台・バックオーダー約1,300台
  3. レスポンス:8月受注1260台、ラッコ累計1500台
  4. carview!:月別登録台数とバッテリー供給
  5. 全軽自協:2026年10月 軽四輪車 新車販売台数 速報
  6. BigGo:8月の軽EV車名別台数と補助金比較
  7. AUTOCAR JAPAN:好調の理由(客層・人気色)
  8. ライブドアニュース:主婦層中心の購入者像
  9. くるまのニュース:販売店に聞いた現状
  10. レスポンス:中村孝仁氏の試乗記
  11. EVsmart:使い勝手チェック(充電性能)
  12. 個人ブログ:忖度無しの試乗記
  13. carview!:ユーザーレビュー
  14. 価格.com:レビュー / クチコミ掲示板
  15. Mobility Insight:不具合の口コミ検証
  16. ダイヤモンド・オンライン:評論家の炎上とレビュー
  17. ビジネス+IT:価格と補助金 / 東洋経済:補助金の壁
  18. 36Kr Japan:ローン・保証・販売網